ツインテールの魔法
それから夏音が笑顔になれるような話題を持ちかけたが、それは長く続かなかった。
「よし、完成」
夏音はゆっくりと前を向く。
いつもより低めのツインテールだが、三つ編みのカチューシャがあった。
さらに、髪はカールされ、ふわふわになっている。
「すごい……」
「お気に召されました?お嬢様」
蒼羽は借りた道具を片す。
「うん。ありがとう、蒼羽くん」
いつものような元気はなかったが、たしかに笑顔を見せてくれた。
「ノンちゃん、姉ちゃんのことなんだけど……」
「ちゃんとやる。蒼羽くんに魔法かけてもらったもん」
夏音は立ち上がる。
「本当に……大丈夫?」
蒼羽は夏音に無理をさせたくないから、どうしてもそう言ってしまう。
「ノンを元気にしてくれるのは髪型だけじゃない。ノンは、ノンのために、リラを守るの」
それを聞いても、同じことは言えなかった。
「……そっか。姉ちゃんも人を勇気づけてたんだ」
「その言い草だと、あんたは私を見下してたことになるけど?」
蒼羽の動きがロボットのように鈍くなる。
振り向くとパーカーにジーパンとシンプルな格好をした空奈が腕を組んで立っている。
「姉ちゃん、出番は……?」
「もうすぐよ。だから、呼びに来た」