ツインテールの魔法
「はい……」
夏音は泣き疲れ、三つの椅子を使って横になって眠っていた。
「あの……千波っていうのは?」
「ここのステージで人気なアイドル。仲良くしてたわけじゃないんだけど、恨まれるようなこともしてない。……一方的にライバル視されてた感じ」
空奈のいる世界から考えると、そのような関係は不思議ではなかった。
「それを知ったあの男が、脅してきたってことか……」
「それがまさか、夏音ちゃんたちのご両親を殺害した犯人だったなんて……」
「あ、いや……俺たちは本当の家族じゃなくて……」
空奈は首を傾げたが、すぐに理解した。
「あの双子みたいなものって、そういうことだったんだ」
紘は黙って頷く。
空奈は目元を赤くして眠る夏音を見つめる。
「可愛い顔してとんでもない過去を抱えてたのね」
「空奈さんは可愛い顔してとんでもない毒を吐きますよね」
「可愛いと思ってるの?」
紘は目を逸らす。
すると、空奈は吹き出した。
「素直だね」
「すみません」
苦笑混じりに言うと、空奈はさらに笑う。
「いいのいいの。夏音ちゃんが一番でしょ?うんうん、蒼羽に勝ち目なし。可愛い妹が出来ないのは残念だけど、夏音ちゃんと友達ってことで」