ツインテールの魔法
3
その日、深夜の地域ニュース番組で、今日の事件について放送された。
それに気付いた瞬間、紘はテレビの電源を切る。
「紘くん……?」
風呂上がりの夏音は髪を拭きながらリビングに来た。
紘は夏音にかける言葉を探す。
「……髪……乾かすよ」
紘は洗面所からドライアーを取ってくると、ソファの前に夏音を座らせた。
毛先から垂れた水が絨毯に落ちる。
ゆっくりとその毛先をまとめ、軽くタオルで拭く。
ドライアーのスイッチを入れると、その音だけが部屋に響く。
少しずつ乾いていく髪に、紘は焦りが出てくる。
なにを言えばいい。
戸籍上家族だとしても、所詮は他人だ。
言葉を間違えれば、またあの日のようにすれ違う。
あのときはまだよかった。
あのときは、フォローしてくれる蒼羽がいた。
だが、今はそのフォロー役はいない。
今度は、間違えるわけにはいかない。
考えれば考えるほど、まとまらなくなる。
そうこうするうちに、夏音の髪は乾いてしまった。
「……終わった」
「ありがとう、紘くん」
ドライアーを止めると、沈黙が流れる。
結局なにもまとまらなかった。
この無言の時間も、無理なかった。
「紘くん」
すると、夏音がいつの間にか向きを変え、正座していた。