ツインテールの魔法
腰あたりまで伸ばしている、生まれつき色素の薄い髪はウェーブがかっている。
体型も小柄な上、少々気弱な性格から、守ってあげたいと男子に人気だ。
「えっと、朱里ちゃんと夏音ちゃんは……また?」
「騒がしいですよね。止めますか?」
「あ、ううん。大丈夫……」
紘はすみれの今にも消えそうな声を、不思議に思った。
だが、特に詮索しなかった。
◇ ◆ ◇
赤い空の中、紘と夏音は帰宅していた。
夏音はアスファルトの上に転がっている小さな石を蹴る。
「紘くんの謎、結局考える時間なかった」
あれから夏音は朱里との会話を楽しんだため、問題をじっくり見れなかった。
「急ぐ必要ないだろ」
文庫本を開きながら歩く紘は、冷たく言った。
先を歩く夏音は足を止め、振り向いた。
夏音が止まったことに気付いた紘も、立ち止まる。
そして本から視線を上げる。
夕日に照らされ、夏音の顔を見たくても眩しくてはっきり見えなかった。
「早く解かなきゃ、紘くんに負けたみたいになるもん。それに、もっとたくさんの謎解きがしたい」
「……テストを盗んだ犯人。探せば?」
夏音が満足する難問を作るには、時間を要する。
もともと謎作りに興味のない紘は、そう持ちかけた。
「……探したって、なんにもならないよ」