ツインテールの魔法
「いつも、ノンのことを考えてくれてありがとう。ノンを守ってくれてありがとう。ノンのそばにいてくれて、ありがとう」
ストレートの髪をなびかせて笑う夏音を見て、涙がこみ上げてくる。
「パパとママがいなくなったのは……ママが浮気をしてたから。なにがあっても、この事実は変わらない。でも……パパはそんなママに怒って、殺したわけじゃなかった。それがわかったから……」
夏音は俯くと、なにかを決意したかのように紘の横に座った。
「紘くんの笑顔を見ると、ノンは嬉しくなります。泣いてるところを見ると、ノンも苦しくなります。これを……家族愛だと、言い聞かせてきました。ノンは……ノンは、紘くんが好きです」
堪えきれなかった。
夏音に見られたくなくて、紘は顔を背ける。
「……蒼羽みたいに、髪を結べない」
「いいよ?髪切ろうと思うし」
「……俺は、夏音の隣に寄り添うことが下手だ」
「じゃあノンが頑張って隣に立つよ」
紘は深くため息をつく。
「なんで俺よりかっこいいこと言うんだよ」
「それはね、ノンが紘くんのお姉……」
紘は自分の唇で夏音の口を塞いだ。
なにが起こったのかすぐに理解できず、夏音は放心状態になる。
そんな夏音が愛おしくて、頬が緩む。
「俺の彼女だよ」