ツインテールの魔法
夏音は儚げな表情を浮かべるが、目を細めている紘には見えない。
ただ、夏音がどんな気持ちで言っているのかはわかった。
「夏音は都築より、見ず知らずの犯人を庇うのか?」
夏音はまた石を蹴る。
「紘くん、意地悪だ」
そう呟くと、紘の左手を取った。
そのまま紘と並んで足を進める。
「どうした?」
「なんとなく繋ぎたかったの」
二人は会話をしなかったが、手を離すこともなかった。
「……誰も悲しまない方法、探す」
夏音は呟いた。
紘は励ましの意味で、空いている右手を夏音の頭に置く。
夏音は悲しそうな、でもたしかに嬉しそうに笑った。
「俺に出来ることがあったら、いつでも言えよ」
「じゃあ、まずあの問題のことなんだけどね」
苦笑するしかなかった。
「被害者、何回殴られたの?」
紘の戸惑いなどお構いなしに、夏音は聞いた。
その鋭い質問に、紘は感心する。
「どうしてそんなことを?」
「だって、おかしいよ。背後から殴られたのに、腕時計が壊れてるなんて。急に襲われる状況で、頭が守れるかな?もし守れるなら、避けると思うの」
「被害者があらかじめ手を頭の後ろで組んでいたとは考えないのか?」