ツインテールの魔法
なぜそう考えなかったのか。
きちんと根拠はあるが、自信がなかった。
そのため、もう少しで家に着くというのに、立ち止まって鞄の中からノートを取り出す。
「……書いてない」
夏音が探したのは、被害者の性格についての記述だ。
殺されたのは女性だから、という理由では弱いとわかっていた。
だから、さらに確実なものにするための根拠、性格を知りたかった。
「振り出しに戻ったか?」
「……ううん、戻ってない。ノンの考えは正しいよ」
女性であること、頭で腕を組まないような性格であること。
それに少々気を取られた。
だが、もっと的確な理由がある。
「頭を狙ってる犯人からしたら、一回で確実に殺せないから、もし頭の後ろで組んでいたとしても、そのときは狙わない。ただ……何回か殴ったなら、話は別」
夏音の推理力に、脱帽するしかなかった。
自分で作った問題だから、当然、性格についての記述がないことはわかっている。
だから、正直、今回は勝ったと思った。
「……二回だ」
「じゃあ、前と後ろの二回だね」
紘の返答に満足し、夏音は鞄を開けたまま、歩き始める。
紘は荷物が落ちるのではないかと、一人ヒヤヒヤしながら家に着いた。