ツインテールの魔法

やっと追いついた夏音は、少し息切れをしていた。
息を整えながら、紘からシャー芯を受け取る。


「ありがとう、紘くん。今回はノンの勝ちだね、蒼羽くん」
「ノンちゃんじゃなくて、紘の勝ちだよ」


得意げに胸を張る夏音の額に、左で作った拳を軽く当てる。
夏音はシャー芯ケースを持ったまま、両手で額を抑えた。

その隙に、蒼羽はまたシャー芯を盗む。


「あ!」
「おバカなノンちゃんに一ついい言葉を教えてやる。油断大敵」


蒼羽がそう言い終えると同時に、紘が静かに、自然に蒼羽の手からまたシャー芯を取った。
そして夏音に渡す。


「ガキ」


たった一言。
それだけなのに、なにを思ってそう言い放ったのかが、嫌というほど伝わってくる。

蒼羽の苛立ちは増していく。


「蒼羽くん、学習しなきゃダメだよ!」


一番しなければならないのはあなたですよ、という言葉を丁寧に、ゆっくり飲み込む。


「でもあれだね。ノン、虎の威を貸す狐状態だね」


恥ずかしそうに言う夏音と、呆れる紘。
蒼羽は苦笑する。


「虎の威を借る狐だ」


夏音の言い間違えを正すのは、だいたい紘の役目だ。
そればかりしているからか、紘の成績は常にトップクラスである。

もともと賢いだけなのかもしれないが。
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