ツインテールの魔法

◇ ◆ ◇


日野が説明を終えると、夏音は欠伸をした。
日野はまた顔を顰める。


「お前……聞いていたのか」
「先生の声、眠くなる……です」


そう言いながら、目をこする。
紘は夏音を庇うように前に立つ。

そのおかげか、日野がうるさく言ってくることはなかった。


「……説明したんだ。犯人、早く見つけてくれよ。どうせ都築だろうが」
「ダメ!」


職員室であるにも関わらず、夏音は叫んだ。
夏音は職員室にいる全員の視線を独り占めする。

下ろした状態で握られた拳は、小さく震えている。


「なにかわかったらまた来ます」


誰かになにかを聞かれる前に、紘は夏音の手を引いて職員室を出た。


「なんだったんだ?」


日野は閉められたドアを見つめる。
すると、近くで話を聞いていた、日野と同年代の女性が口を挟んだ。


「今のは日野先生が悪いですよ。先生の話だと、都築くんが犯人だという証拠も根拠もない。むやみに生徒を疑うものじゃありません」


言われた言葉は、昨日夏音に言われたこととほぼ同じだった。
それでも蒼羽が犯人だと思う日野は反論し、それにさらに女性の先生が返していく。


「ノンちゃん……大丈夫かな……」


ベテラン教師二人の会話を横に、小豆は誰にも聞こえないであろう声で呟いた。
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