ツインテールの魔法
考えようとしない紘に、夏音は頬を膨らませる。
「一年生のテストが盗まれたなら、問題が変わるのは一年生のだけ。二年生と三年生は作り直さない。作り直す必要、ないもん」
「……それが今回の事件の狙いってことか」
「ピンポーン」
夏音は手を叩く。
その反応が気に入らなかったのか、紘は夏音を睨む。
だが、夏音はそんな紘を無視し、紘のノートを覗き込んだ。
「まだキーが少ないねー」
机の角がちょうどお腹に当たり、夏音は苦しそうな声を出す。
紘はノートを回し、夏音が見やすいようにした。
「もっと……これって感じのヒントがあれば……」
「これ以上は先生に聞いたって仕方ないと思う」
「わかってるよ……」
夏音はなにも書かれていないのに、ページをめくる。
夏音が欲しいと思っている情報は、テストを盗みそうな人リストだ。
目的としては、いい成績を残したい。
これは、誰であろうと変わらないだろう。
そうなると、やはり容疑者は全校生徒となる。
しかし、最も怪しいと考えるのは、あと少しでトップに立てる人か、進級が危ぶまれる人。
「みんなの成績を教えてもらうわけにはいかないしなあ……」
「成績?なんで?」
夏音の独り言を無視できず、紘は筆箱を鞄に入れながら聞いた。