ツインテールの魔法
「蒼羽くん、驚きすぎだよ。先生だって、謝ることくらいできるんだから」
蒼羽が言葉を濁したというのに、後ろにいた夏音がはっきりと言った。
日野は苦笑するしかない。
しかし、そんな日野には目もくれず、夏音は蒼羽を連れて廊下に出た。
「あんな言い方しなくてもよかったんじゃない?」
夏音の隣に荷物を置きながら言う。
夏音は鞄の中に入れてある紘手作りの要点ノートを取り出すために伸ばした手を止めた。
「謝っても、やったことは消えない。だから、ノンはずっと先生のことは嫌いなままだと思う」
「俺のために怒ってんの?なになに、もしかして俺のこと好きだったりする?」
気付けば、いつも通りの悪い顔に戻っていた。
真横でそんな顔を見せられて、夏音はこれ以上暗い顔をしてはいけないと思った。
しかし、蒼羽の言葉から笑顔は作れなかった。
夏音は不思議そうな表情を浮かべる。
「ノン、蒼羽くんのこと好きだよ?」
「そういう意味じゃないんだよなあ」
蒼羽は必要以上に夏音に顔を近付ける。
余計に意味がわからなくなったところで、日野の教室に入れという指示が聞こえてきた。
「テスト頑張ろうね、蒼羽くん」
毒を抜かれるような夏音の笑顔に戸惑い、蒼羽は夏音から離れた。