ツインテールの魔法
◆ ◇ ◆
一日目のテストが終わると、夏音は提出物を教卓に置き、すみれのクラスに走った。
一年と三年では終わる時間が違ったらしく、廊下には荷物がなく、ほとんど人がいなかった。
諦めて帰ろうとしたそのとき、教室からの声が廊下に響いてきた。
「どういうことだよ!」
「私らのこと騙したわけ!?」
夏音は状況証拠になると思い、教室に飛び込んだ。
「……誰」
しかし、そこにはすみれの姿はなかった。
三人の女子生徒が教室の真ん中あたりで円を作っている。
夏音はその三人に睨むように見られた。
無計画に飛び込んでしまったせいで、夏音は目を泳がせる。
「えっと……ごめんなさい、間違えました」
夏音は三人に問い詰められる前に、その場から逃げた。
その途中、俯き、早歩きをしていたせいで、前から歩いてきた人に気付かず、そのままぶつかった。
「紘くん……ごめんね」
相手は紘で、夏音は少し安心した。
紘は作り笑いを浮かべる夏音を見て、ため息をつく。
「いると思った」
「えー……なんでー……」
その声は泣きそうだけど、やはりどこか安心しているようだった。
「先輩がさらに酷いいじめを受ける可能性を高めたから……罪悪感みたいなもんだろ?」
「……バレてる」
「一応、夏音の弟なんで」