ツインテールの魔法
「一応ってなにさー」
夏音は頬を膨らませた。
紘はその膨れた頬を両手で潰す。
「その様子だと、なにもなかったか」
「怒ってはいたんだよ?私たちのこと、騙したのかって。だから、紘くんの推理は正しいかもしれない」
夏音は頬を挟まれたまま、説明をした。
手を離すと首が折れたと見紛うほど、綺麗に下を向くと思った紘は、手を離さなかった。
「それでも、まだ先輩がやったとは言いきれないだろ」
「そうだけど……あーあ。警察だったら、ここで指紋採取して終わるんだろうなあ」
つまらないことを言い始めた。
紘はそう思った。
夏音らしくない、と。
「そうだ、警察に頼ったらよかったんだ。ノンなんかじゃなくて、プロに」
紘はどんどん手が離せなくなっていった。
「ノンは誰かを苦しめることしか……」
「夏音!」
頭の中に生じたモヤモヤは、紘の声で飛んで行った。
伏せていた目を開け、紘を見上げる。
紘は、夏音よりも辛そうな顔をしていた。
「紘くん……?」
夏音は紘が怒った理由はわかっても、苦しんでいる理由まではわからなかった。
「……夏音がいるだけで幸せな奴もいるんだ。そんなこと、言わないでくれ」
夏音は慰めようと、紘の頭に手を伸ばした。
「ごめん……ありがとう」