ツインテールの魔法
すると、夏音が触れるより先に紘は夏音を抱きしめた。
「あのー、お二人さん?ここ、廊下ですよ?」
誰かに声をかけられて、二人は声がしたほう、夏音の後ろを見た。
そこには、朱里と朱里の背中から顔を覗かせるすみれがいた。
夏音は紘の腕の中で向きを変える。
「二人とも、どうしたの?」
「こっちのセリフなんだけどなあ」
朱里は苦笑しながら、夏音たちの横を通っていく。
すみれはそのあとを小走りで追う。
二人は自分のクラス、さっき三人がいた教室に入った。
夏音は鉢合わせになると思って、紘の腕から抜けて、教室を覗いた。
「あれ……?」
教室内に三人の姿はなかった。
いつの間にか帰っていたらしい。
「本当にどうしたの、夏音」
リュックを机の上に起きながら、夏音を見つめる。
「ううん……なんでもない。二人は?」
「課題を提出してきたの」
すみれは机の横にかけていたスクールバッグを肩にかけた。
そして出入り口で突っ立っていた夏音のところに行く。
「すみれセンパイが朱里センパイについて行ったの?」
すると、すみれは首を傾げた。
「ううん、朱里ちゃんが半分持ってくれたの。ペアの人、今日休んでたから」