ツインテールの魔法

「へー……」


夏音は教室の真ん中に一気にいる朱里を見た。
朱里はリュックを背負っているはずなのに、動かない。


「朱里ちゃん?」


すみれが呼びかけるも、朱里の反応はない。
不思議に思ったすみれは、朱里の元に駆け寄る。


「朱里ちゃん、どうしたの?」


すみれに腕を掴まれた瞬間、朱里はポケットに手を入れた。

ドア付近から見た朱里は、なにかに怯えているように見えた。


「あー……ごめん。私、先生に用があったんだ。みんな、先に帰ってて?」


朱里は夏音がいる後方のドアではなく、前方のドアから教室を出ていった。


「……紘くん」


夏音は朱里の背中を見つめたまま、後ろにいた紘を呼んだ。


「行こう」
「……了解」


紘は特に理由も聞かず、夏音の言うことに従った。

だが、すみれがそれを引き止める。


「あの、どうして……」


すみれは動揺しているようだった。
夏音は掴まれたすみれの手に、自分の手を重ねる。


「すみれセンパイのほうがわかってるよね?」


目を泳がせ、俯いた。
そして、ゆっくりと手を離した。


「……私も、行く」


そして三人は、朱里の跡をつけた。
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