ツインテールの魔法

◇ ◆ ◇


乱暴にポケットに手を突っ込む。

たくさんの折り目がついた紙切れを取り出し、改めて目を通す。


『A講義室』


机の中に入っていたメモ用紙。
場所指定だけで用件もなにも書かれていないが、要件はだいたい想像できた。


またポケットに戻し、目的地に向かう。


もといた教室からA講義室まではそう遠くない。
すぐにそこに着き、閉められたドアに手をかける。


開けると、部屋には三人の女子生徒がいた。
三人はドア付近に立つ朱里を睨む。


「やっと来た」
「私たちから逃げられるとでも思った?」


三人はクスクスと嘲笑する。

朱里は重い足取りで移動した。


「さて、委員長。説明してもらえる?」
「理由によっては……わかってるよね?」
「なに、言えないの?」


朱里はどんどん口を閉じていく。
いや、開けなかった。

なにを言ったとしても、火に油を注ぐ形になるとしか思えなかった。


だが、そう長く黙り続けられない。

朱里は俯いたまま、話し始める。


「私は……ちゃんと言われた通りにした……でも」


すると、机が動く音がした。

嫌な予感がして、顔を上げる。


「バカにするのもいい加減にしてよ!」
< 39 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop