ツインテールの魔法
「ノン、可愛い?」
夏音は彼女たちの言葉を素直に信じた。
こういうところが、いろんな人に好かれる理由なのだろう。
「どうでもいいが……都築が夏音をからかったりしなかったら、俺は」
「あ、悪い。それは無理」
蒼羽は紘の主張を遮る。
あんなに面白いおもちゃ、手放すわけがない。
そう心の中で続ける。
すると、遮られたことに怒ったのか、紘は殺気ともとれる空気を漂わせた。
蒼羽は逃げるように視線を逸らす。
「紘くん!ノンのこと、嫌いなの?」
女子から解放されたのか、それとも抜け出したのか、夏音は紘たちの間に立った。
女子はもういなかった。
「そうは言ってない」
蒼羽は面倒そうに言うが、その答えが不満な夏音は、頬を膨らませる。
「ノンは紘くんのこと好きなのに」
「はいはい」
「紘くん冷たい!」
夏音は紘の胸を何度か叩いた。
紘は呆れ、大きくため息をつく。
もう何度も見てきたやり取りだが、何度見ても面白い。
蒼羽は堪えきれなくなり、吹き出してしまった。
「なんで笑うのさ、蒼羽くん」
「ノンちゃんが可愛いなあ、と思って」
そう言って、あの女子たちと同じことを言っていることに気付いた。
女子特有の嘘だと思ったが、あれは嘘ではなかったのか、と思った。