ツインテールの魔法
ある一人が朱里の前に立ち、右手を振り上げた。
朱里は咄嗟に目を閉じる。
「暴力はダメですよ、先輩」
痛みはなく、そんな声が聞こえたから、朱里はゆっくりと目を開けた。
彼女の手を掴む紘が立っていた。
ほかの二人が逃げようとするが、前を夏音が、後ろをすみれが塞いだ。
「一人で来なかったの!?」
「わ、私……」
朱里はますます怯えた。
「違うよ、センパイ」
「あんた、教室に来た……」
紘に腕を掴まれている彼女は、そう呟いた。
「桃城夏音。朱里センパイの後輩だよ」
夏音は朱里の前まで足を進める。
「朱里センパイはちゃんと盗んだよ。ノンが邪魔しただけ」
「邪魔?」
まだ解放されない彼女が、夏音を睨んだ。
しかし、夏音は止まらない。
「ノンが先生にお願いしたんだ。全学年のテストを作り直してほしいって」
「ど、どうして……?私……偽装工作を……」
ここまで来たら誤魔化せないと判断したのか、朱里は震えた声で聞いた。
「センパイ、ノート見たよね?」
朱里は部室で見たノートの内容を思い出す。
「で、でも、そんなことは書いてなかったはず……」