ツインテールの魔法
「受験生で得点なしは痛いねー」
夏音はそう言いながら、昇降口とは真逆のほうに向かって歩き始めた。
「夏音、どこに行く気だ」
「部室。……開いてないかな?ノンの推理、話そうと思ったんだけど」
夏音は紘から朱里に目線を移す。
「開いてる」
「よし、じゃあ行こう」
◇ ◆ ◇
部室に着いて中に入っても、朱里とすみれは入り口で立ち止まったままだった。
「二人とも、座らないの?」
「うん……」
曖昧な返事で、結局座らなかった。
「……空気が重い」
あまりに沈黙が続いたため、夏音は呟いた。
「ご、ごめんね、夏音ちゃん。最初から聞くよ」
気を使ったすみれが、夏音の機嫌を取るように言った。
「……じゃあ、なんでノンが朱里センパイにたどり着いたか、説明するね」
そして二人は無言に戻った。
「ノンたちは、すみれセンパイが犯人だと思ってた。すみれセンパイがいじめられてるとこ見たし、紘くんがテストが盗まれた次の日のセンパイの様子がおかしかったって言ったから」
朱里とすみれの視線が紘に行く。
紘はどうすればいいかわからず、とりあえず頷いた。
「でも、紘くんが見たのはいじめじゃなかった。……多分だけど」