ツインテールの魔法

「……夏音、可愛い。大好き。俺だけのものになって」


夏音に回りくどいことを言っても伝わらないと思ったのか、蒼羽は教室であるにも関わらず、そう言った。
教室にいる生徒がざわめく。

だが、夏音は赤面もしなければ、動揺もしない。


「蒼羽くん、嘘はダメだよ?」


伝わる伝わらない以前に、夏音はその言葉を信じなかったのだ。


「嘘じゃないんだけどなあ」


蒼羽はそう言いながら立ち上がり、夏音を立たせる。


「紘より俺を選ぶようにしてやるから、覚悟しといてね」


蒼羽は夏音の額に唇を当てる。
これにはさすがの夏音も動揺し、頬を紅潮させた。

紘は蒼羽に殺意を向ける。


「じゃあ、またあとで」


それから逃げるように、蒼羽は教室を出て行った。


「紘くん……ノン、頭がパニックになったです」
「忘れたら?」


夏音の頭の中が蒼羽でいっぱいになったことが気に入らないのか、紘はそう言い捨てた。


「……いいのかな?」
「俺としてはそのほうが嬉しいけど」
「わかった。じゃあ忘れる」


そして蒼羽のあの行動は、夏音の中でなかったことにされた。


「そうだ、紘くん。今日部活行くよね?」
「行くけど……なんで?」
「朱里センパイが、部長の引き継ぎしたいって」
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