ツインテールの魔法
「……変なこと言わないでよ」
冗談で言ったはずなのに、朱里は心から嫌そうな顔をした。
蒼羽はタイミングを間違えたと思ったが、後の祭りだ。
「森を隠すなら林の中」
重い空気の中、夏音が呟いた。
紘は訂正をするために口を開こうとしたが、それより先に夏音が話し始める。
「センパイは、自分がテストを盗んだことを隠そうとした。だけど、ダメだよ。隠すことのほうが大きかったら、隠れるものも隠れない」
その説明を聞いて、紘は訂正するのをやめた。
必要がないと思った。
そしてまた、沈黙が訪れる。
時間が経つにつれ、誰も話せなくなっていく。
まるでその沈黙に支配されたかのように。
どれくらいそうしていたか、わからない。
だが、沈黙に耐えられなくなった夏音が、閉まっていたドアを開けた。
「帰る!」
「え、あの、まだ引き継ぎ……」
「だって、静かなままだもん!誰も動かないんだもん!ノン、そんなとこに用はない!」
自分でその空気を作ったくせに、と何人心の中で呟いたことだろう。
「ノンは早く、紘くんの作った問題の答え合わせがしたいの!」
全てを壊すにはちょうどいいテンションだった。
徐々に場はいつもの空気に戻っていった。