ツインテールの魔法
夏の嘘つき看板娘
1
季節はすっかり夏になった。
毎日毎日、逃げたくなるような眩しい日差しがアスファルトを照らし、どこからともなくセミの大合唱が聞こえてくる。
「暑いー!」
夏音はミステリー研究部の部室の窓を開け、思いっきり叫んだ。
今は夏休みで、部活もないのに学校にいるのは、補習があるからだ。
夏音の一学期末試験の結果は悲惨なものだった。
しかし、教師側が事件のことを考慮し、本来受けるべき時間より気持ち短くしてもらった。
そういうわけで、夏音の補習は今日で終わりだ。
「廊下まで聞こえる声で叫ぶな」
不機嫌そうに入ってきたのは紘。
あとから蒼羽が扇風機を持って入ってきた。
「扇風機だー!」
夏音は紘の言葉を無視し、蒼羽の持つ扇風機に引き寄せられた。
「まだ紘と喧嘩してんの?」
「紘くんが悪いんだもん!」
蒼羽は夏音の奥にいる紘を見る。
紘は呆れてため息をついた。
紘に対する態度がこうなったのは、一か月ほど前のこと。
紘が作った問題の答え合わせをして以来、ずっと怒っている。
ただその答えに納得がいかないという理由で。
「さすがに許してやったら?」
蒼羽からすれば、夏音と紘の仲が悪くなることはうれしいことだが、夏音が意地を張っているだけだとわかっているから、こう言うしかなかった。