ツインテールの魔法
仲直りを促された夏音は、紘を盗み見て、自分のつま先を見た。
「……作り物の謎だから、情報の後出しとか、やったらダメなんだよ」
夏音の言う後出しされた情報は、人物関係だ。
その情報がなかったことで、夏音は犯人を間違えたのだ。
夏音が導き出した答えは、友人が口論になって殴ってしまい、それを隠すために恋愛関係になっていた元恋人が殺した、だ。
だが、紘の言う答えは友人が口論になって殴り、それを見つけた妹がもともと憎んでいた姉を殺した、だった。
姉妹の仲など、記されていなかった。
「完璧な問題を望むなら、素人に頼むなよ」
夏音が歩み寄ろうとしたのに、紘が突き放す。
蒼羽は紘を見た。
紘は、蒼羽の思い通りに夏音と仲直りをすることが嫌だった。
しかし、言ったことはあながち嘘ではなかった。
「紘くんなんて知らない!」
すると、夏音は泣きそうな顔をして部室を飛び出した。
「二人して頑固なんだな」
「余計なお世話」
「ま、お前がどれだけ頑固でも俺は構わないけどねー」
蒼羽は扇風機を床置くと、夏音の後を追った。
「……うるせえよ」
◇ ◆ ◇
一階、西階段の影で、夏音は丸くなっていた。
「ノンちゃん」
蒼羽が声をかけると、夏音は蒼羽に飛びついた。
身構えていなかった蒼羽は、危うく後に倒れるところだった。
「ノン、悪くないもん……」
夏音の顔は見えなかったが、声が震えていたことから、泣いていたのだとわかった。