ツインテールの魔法
蒼羽は嫌がられると思いながら、夏音を自分から離し、顔を覗き込む。
案の定、夏音は顔をそらした。
「ノンちゃん、海に行かない?」
あまりに唐突な提案で、夏音はきょとんとした。
「俺のおじさんが海の家を経営してて、手伝ってほしいって言われててさ。ノンちゃんもどう?」
「……なんでノン?」
「そりゃあ、ノンちゃんと一緒にいたいからに決まってんじゃん」
それでも、夏音は頷かなかった。
「もしかして、海嫌い?」
「ううん、大好き。でもね、紘くんと行けないなら行かない」
その理由に、唖然するしかなかった。
あれだけ喧嘩しておきながら、紘と行きたいという夏音が、理解できなかった。
「紘なんてどうでも……」
「よくないよ!楽しいことは、紘くんも一緒じゃなきゃ」
聞けば聞くほど、意味がわからなかった。
「……紘も誘ってみるよ」
その言葉で、夏音の顔は一気に明るくなった。
それを見て蒼羽が赤面していたことなど、夏音には見えていなかった。
◆ ◇ ◆
「……納得いかない」
翌日、三人は電車に揺られていた。
向き合っている席に、夏音と紘が並んで座ったから、蒼羽は一人で席に座っている。