ツインテールの魔法

そして、電車に乗ってすぐ、蒼羽はそう呟いた。


蒼羽の目の前には、楽しそうに紘に話しかける夏音がいる。

座っている席に納得いっていないのは当然のことだが、こうして仲直りをしていることも納得出来なかった。


「なにが納得いかないの?」


紘との会話を楽しんでいると思っていたのに、夏音には蒼羽の独り言が聞こえたらしい。

蒼羽は呆れた表情で、夏音と紘の顔を交互に見る。


「君たち、昨日まで仲直りする雰囲気ゼロだったじゃん。話したくないって感じだったじゃん。なんで、昨日の今日でそんな仲良くなってんの」


二人は顔を見合わせる。


「楽しいことがあるのに、喧嘩なんてしてられないもん」


夏音は本当に楽しそうだった。


それを見ること自体は嬉しいが。


「俺は紘がいるせいで微塵も楽しくないですけどねー」


蒼羽は拗ねて窓の外を見た。


「ガキ」


すかさず紘に言われ、蒼羽はさらに拗ねてしまった。
紘は嘲笑を重ねる。


すると、紘の横から規則正しい寝息が聞こえてきた。
夏音が紘の左肩にもたれかかって眠っている。


「……紘さ、なんで急にノンちゃんを渡さないとか言い出したんだよ。俺がシスコンかって聞いたら、怒ってたよね?」
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