ツインテールの魔法
夏音に聞かれたくない話題で、夏音が寝ている今がチャンスだと思った。
しかし、紘は不思議そうな顔をした。
「怒ったか?」
「怒ってたよ。俺が夏音にいたずらしなきゃどうのこうのって」
思い出したのか、紘はああ、と零した。
「あれは、都築が夏音をからかわなかったら、ガキとは言わないって話。俺はシスコンのことは触れてない」
確かに、思い返してみれば、蒼羽がシスコンと言って怒ったのは、紘のファンの女子たちだった。
そして、紘が自分のことをガキだと言った理由も、なんとなくわかる。
だが、一つだけ引っかかることがあった。
「……今さっき言ったじゃん」
「それはそれ。あれはあれ」
そして紘は読書を始めてしまった。
無理矢理話題を続けようと思っても、紘の話しかけるなオーラに圧倒される。
しかし、まだどうしても腑に落ちないことがあった。
「なんで来たんだよ」
「……裾掴まれて、上目遣いでお願いされて断れるか?」
紘に言われたことを自分に置き換えて想像してみる。
返す言葉がなかった。
そして、紘は完全に読書に集中し始めた。
手持ち無沙汰となった蒼羽は、見飽きた外の景色を眺めるしかなかった。