ツインテールの魔法
◆ ◇ ◆
「海だー!」
海水浴場の最寄り駅から歩いて五分後、すっかり目が覚めた夏音が叫んだ。
たくさんの人で賑わっているとしても、夏音たちは注目の的となった。
「……叫ばなきゃ気が済まないタチ?」
「俺が知る限り、そんなはずはない」
男二人の会話など耳に入っていない夏音は、目を輝かせて海を見つめる。
「入っちゃダメかな!?」
「なにしに来たんだよ」
「お手伝い!」
「ならダメだろ」
紘に言われ、夏音は頬を膨らませた。
「早く終わらせたら遊べると思うよ」
蒼羽のフォローで、再び目が輝く。
「ノン、早く終わらせる!」
夏音のやる気が出てきたところで、蒼羽を先頭にして砂浜を歩く。
歩くにつれて足が砂だらけになっていき、夏音はどんどん楽しそうに、紘は不機嫌になっていった。
「おじさーん」
木製の趣ある建物の前で立ち止まった蒼羽は、店内に向かって叫んだ。
すると、なにかを落とす物音とともに、男性が出てきた。
「俺のおじさんの、紺野玲二さん。おじさん、桃城夏音と、紘」
蒼羽は手短に紹介を済ませた。
三人は軽く頭を下げる。
「あれ、結衣花は?」
蒼羽は店内を見渡す。