ツインテールの魔法
「体調悪いみたいで……今休んでる」
玲二は申し訳なさそうに苦笑した。
「ねえ、蒼羽くん。ユイカって誰?」
「俺のいとこだよ」
「いとこ!会いたい!」
すると、紘が夏音の口を塞いだ。
「体調が悪いって、聞いてなかったのか」
夏音は大人しくなった。
そして、紘はそのまま夏音を近くの椅子に座らせた。
「なにするの?」
「髪、そのままだと邪魔だろ」
夏音の髪型はいつも通りのハイツインテールで、胸あたりまで長さがある。
手伝っていく中で邪魔になることもあるだろうが、客もいい思いをしないだろう。
それがわかった夏音は、黙って座った。
紘は慣れた手つきで夏音の髪を結っていく。
数分もしないうちに、夏音のハイツインテールは二つの団子に変わった。
「ありがとう、紘くん!」
夏音は勢いよく立ち上がり、満面の笑みを見せた。
そして、玲二に仕事内容を聞きに行った。
しかし、もともと手伝う気がなかった紘は、夏音が座っていたところに腰を下ろした。
「紘、毎日夏音の髪結んでんの?」
蒼羽は紘の横に座って聞いた。
「母親がそういうことが苦手だからな」
紘は鞄から本を取り出し、栞を頼りにページを開く。