ツインテールの魔法

「事実でしょ。あと、お客様がいるの。騒がないで」


おぼんに二つのかき氷を乗せ、それを持って出てきた結衣花が冷たく言った。
そしてかき氷を渡すとき、目を疑うような可愛らしい笑顔を見せた。


「結衣花ちゃんは狼さんだ……」
「それ、意味違わない?」


夏音と蒼羽は顔を見合せ、首を傾げる。


「結衣花ちゃんは嘘つきさん」
「結衣花ほど素直な子はいないと思うけど。夏音もバカって言われたんでしょ?」
「そうだけど……でも、結衣花ちゃんは嘘つき」


夏音があまりに譲らないから、蒼羽は戸惑った。


「人を嘘つき呼ばわりしないで」


二人の会話が聞こえていたらしく、結衣花は夏音を睨んだ。
夏音はじっと結衣花を見つめる。
次第に結衣花が押され、目を逸らした。

すると、夏音はその場にしゃがんだ。


「結衣花ちゃん、体調は大丈夫?元気そうだね?」


結衣花の表情が固まった。
ゆっくりと夏音のほうに視線だけを動かすと、夏音が勝ち誇ったような顔をしているように見えた。

それに腹が立ったのもあるが、全てを見透かされているような気がして怖くなり、結衣花は夏音を押した。
夏音は綺麗にバランスを崩し、尻もちをついた。


「大丈夫か?」
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