ツインテールの魔法
「ありがとう、蒼羽くん!」
からかってくる相手に見せるとは思えない、満面の笑みだった。
蒼羽はこれを見て心が痛まない自分に、ちょっと呆れてしまった。
蒼羽の席は夏音の左隣で、席に着きながら少し気になったことを聞いてみる。
「でも、なんで今?渡すなら、放課後でもよくない?」
「放課後は答え合わせの時間なの」
夏音と紘は、ミステリー研究部に所属している。
面白そうとは思わなかったが、夏音をからかえそうだと思って、蒼羽も入った。
正直、帰宅部同然の部活だと思っていた。
だけどそんなことはなくて、夏音は真面目に活動している。
紘も、それに付き合うことで家では勉強に集中できるとかいう理由で、真面目になっている。
蒼羽からしてみれば、一つも楽しくない。
入部したことを後悔しているのは言うまでもない。
「蒼羽くんも、解いてみようよ!」
無邪気な提案を、蒼羽は受けることが出来ない。
さっきも言った通り、蒼羽には解けないから。
「今回の問題はちょっと難しいんだ。だから……」
「やらない」
夏音に解けないのなら、蒼羽に解けるわけがない。
だから、夏音の言葉を遮った。
夏音は余程ショックだったのか、肩を落とした。
そんなことをされても無理なものは無理で、蒼羽は見て見ぬふりをするしかなかった。
「謎解き、楽しいのに」
「解けたら、ね」