ツインテールの魔法
そして二人は紘の顔を見た。
「俺は行かない」
「なんで!?行ってよ、紘くん!結衣花ちゃんのこと、心配じゃないの?」
「夏音に嫌いって言った奴に優しくできる自信ないけど」
夏音は頬を膨らませた。
「じゃあノンが行く!」
蒼羽はまた引き止めようとしたけど、客が来たせいで出来なかった。
◆ ◇ ◆
あんなことを言うつもりはなかった。
後からやってくる後悔に襲われながら、海岸を歩いていく。
たまに押し寄せてくる波が足にかかる。
引いていくときに連れてきた砂が、肌を撫でる。
サンダルは初めから手に持っていたから、濡れる心配はない。
海の家から離れていくと、人の数も少なくなってくる。
徐々に賑やかさも遠ざかっていき、波の音が耳を占領していく。
行き止まりまで来ると、砂浜の上に腰を下ろした。
「私って、本当に可愛くない……」
「結衣花ちゃんは可愛いよ?」
唐突に声をかけられて、結衣花は振り返った。
斜め後ろに立っていた夏音は小さく手を振ると、結衣花の横に座った。
「ここ、綺麗だねー……」
夏音は青い空を遠く見つめる。
「……なんで来たの。私、あなたに酷いことを……」