ツインテールの魔法
「どんなときでも、一人は寂しいもんね」
優しく微笑みかけられ、結衣花はなにかを言おうとするけど、上手く言葉が出てこない。
夏音は戸惑う結衣花を、急かすようなことはしなかった。
かなり遠いはずなのに、賑やかながよく聞こえてくるくらい、二人の間には沈黙が流れた。
「……あなた、座ってるだけなんて出来たんだ」
憎まれ口を叩くことしか出来ない自分に、心底嫌気がさす。
「結衣花ちゃん、本当にノンのことバカにしてるね?ノン、空気読むくらいできるよ」
「客がいても騒ぐくせに」
二人は睨み合うと、同時に吹き出した。
「あれ、紺野じゃん」
人がいなかったはずなのに、結衣花は誰かに呼ばれた。
そして笑顔が消えた。
声をかけてきたのは、少年だった。
結衣花は海のほうを、夏音はその少年を見た。
「お前、またこんなとこにいるんだ?可哀想な奴」
「……がう……」
「はあ?聞こえねえよ」
少年は嘲笑した。
結衣花は立ち上がると、今にも少年に掴みかかりそうになった。
夏音は座ったまま、結衣花の腕を掴んで止める。
「結衣花は可哀想じゃない!」
だけど、結衣花の感情が収まることはなかった。
叫んですぐ後悔したのか、結衣花は夏音の手から抜け出し、海の家のほうに戻って行った。