ツインテールの魔法
蒼羽は慌ただしくしながら、結衣花に言った。
結衣花は手伝いに動くが、視線は紘を探していた。
紘は隅のほうで本を読んでいる。
そして、その周りの女の人たちが紘に夢中になっている。
「なるほど、客寄せパンダか」
そんな結衣花の皮肉が聞こえたのか、紘が本から視線を上げた。
結衣花と目が合うが、結衣花はさっと目を逸らした。
紘は結衣花の前に立ち、見下ろした。
「夏音は?」
「……海岸に置いてきたけど」
結衣花は恐る恐る紘のほうを見る。
すると、紘は青い顔をして結衣花の両肩を掴んだ。
「どこだ!」
「あ、あっち……」
結衣花は紘の迫力に圧倒されながら、自分がいた方向を指さした。
それを確認した紘は、結衣花に本を押し付け、走り出した。
走りながら、夏音を一人にしたことを後悔した。
自分はなんのために来たんだ。
なんで結衣花と戻ってくると思ったんだ。
その後悔で、焦燥に駆られる。
もうすぐ行き止まりだと思い、紘はスピードを落とす。
そのとき、海に入っていく人影が見えた。
紘はまた走った。
さっきよりも速く走った。
そして人影、夏音の腕を掴んだ。
「紘くん……?」
まさか紘が来るとは思ってなかった夏音は、驚いた。