ツインテールの魔法
2
「おかえり、客寄せパンダとバカ」
海の家に戻ると、二人は辛辣な言葉に迎えられた。
店は落ち着いていたらしく、結衣花は昼ごはんとして焼きそばを食べていた。
結衣花はさっきのことがなかったかのように振舞っている。
そのためか、夏音は触れなかった。
「紘くんってパンダさんなの?」
そして夏音は紘の顔を見上げた。
そこには、さっきまで落ち込んでいた夏音はいない。
「違うよ、ノンちゃん。いるだけで客が寄ってくる奴を、客寄せパンダって言うんだよ。つまり、嫌味」
すると、手を繋いで帰ってきた二人の仲に嫉妬した蒼羽が、割って入った。
「……結衣花ちゃんに嫌われてるんだね、紘くん」
「夏音もな」
蒼羽のことなど見えていないと言わんばかりに、二人は顔を見合わせた。
蒼羽はますます面白くなかった。
「俺の前でイチャつかないでよねー!ノンちゃん、かき氷食べよ!」
そして蒼羽は夏音の返事を聞かずに、厨房に連れて行った。
一人残された紘に、結衣花が近寄る。
結衣花は一冊の本を差し出した。
あのとき紘に押し付けられたものだ。
「……ありがとう」
「お礼、言えたんだ」
また皮肉を言って、結衣花は席に戻った。