ツインテールの魔法
紘は躊躇うことなく、向けられたスプーンに乗ったかき氷を食べようとした。
だが、それはまた間に来た蒼羽の口に入った。
「あー!蒼羽くん、なんで食べるのー!」
「紘はこれで十分だろ。ノンちゃん、俺と食べよ」
蒼羽は紘の前に、シロップがかけられていない氷の山、みぞれを置いた。
そしてまた邪魔をするために、間に座る。
「ノン、紘くんと食べたい」
「俺と食べようよ」
「紘くんがいい」
きっぱりと言われた蒼羽は、結衣花の隣に移動した。
椅子の上で膝を抱えて座る。
「……なにもそこまではっきり言わなくてもいいじゃないか」
蒼羽は落ち込んで呟くが、夏音には聞こえていない。
「はい、紘くん」
そして夏音は再び紘にスプーンを向けた。
今度こそ、それは紘の口に入った。
「ね、美味しいでしょ?」
「ふつ……いや、美味しい」
結衣花を前にして普通とは言えず、気を使って紘は言い直した。
だが、結衣花は全く気にしていないように見える。
結衣花は早くこの場から離れたかったが、まだ食べ終えていなかったため、我慢して焼きそばを食べ進めることに集中していたのだ。
「結衣花ちゃん、そんな急いで食べなくても、玲二さんは逃げないよ?」