ツインテールの魔法

結衣花は夏音の声をかき消すように机を叩いた。


「結衣花は、可哀想じゃない!」


結衣花は涙目だった。

夏音はスプーンを置くと、立ち上がった。
そして、優しく結衣花を抱きしめる。


「うん、わかってるよ」


だが、結衣花は夏音を突き飛ばした。
咄嗟に紘が夏音の後ろに立つ。


「あんたになにがわかるの!?あんたみたいな、幸せ者に……!」
「結衣花、落ち着け」


蒼羽に言われて、結衣花ははっとした。
夏音を見ると、困ったような、悲しそうな表情を浮かべている。

夏音は肩に置かれた紘の右手に、自分の左手を重ねる。
そして強く握った。


「ノン……結衣花ちゃんの気持ち、わかるもん……」
「まだ言うの」


結衣花はまた怒りがこみ上げてきた。


「結衣花ちゃん……可哀想って言われるの、自分だけだと思ってない?」
「思ってない。でも、あんたみたいなのが言われてきたなんて思えない」


結衣花は鋭い視線を夏音に向けた。
すると、その間に紘が入る。


「お前、いい加減にしろよ」
「……思ったこと、言っただけ」
「ちょっと、二人が喧嘩してどうすんだよ。それと紘。夏音、いなくなってるけど」


蒼羽に言われ、紘は振り返った。
そこにはさっきまでいたはずの夏音がいなかった。
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