ツインテールの魔法
「お前と夏音が似てると言ったのは、そういうことだ。夏音自身、自分を可哀想だと思わなかった。悲しくないと言えば嘘になっただろうが、自分は恵まれている、幸せ者だと思ったから」
そこで初めて、紘は結衣花と目を合わせた。
「お前もそうだろ?」
結衣花は夏音の過去に戸惑った。
紘の言うことは間違いなくて、頷く。
そして静寂が訪れた。
「……結衣花が小さいとき、ママは病気で死んだ。だから、パパが一生懸命、仕事してた。でも、そしたら結衣花、一人だった」
囁くように始まった結衣花の話を、紘は黙って聞く。
聞いていないように見えるが、紘は確かに結衣花の話に耳を傾けていた。
「寂しいなんて、言えなかった。パパが頑張ってくれたの、わかってたから。……でも結衣花が我慢してること、パパは知ってた」
そのとき、紘は玲二が厨房から顔を覗かせていることに気付いた。
紘と目が合った玲二は、人差し指を唇に当てた。
紘は小さく頷き、また結衣花の話を聞く。
「パパは結衣花ともっと一緒にいられるようにって、この海の家を始めた。でも……本当は、違うんだ。結衣花、パパと一緒に遊びたかっただけなんだ」