ツインテールの魔法
3
結衣花と夏音は、奥にある和室の結衣花の部屋に行った。
外から海水客の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「外の声、意外と聞こえるね」
夏音は店との出入口に耳を当てる。
「で、聞きたいことあるんじゃないの?」
「聞きたいこと?ノンが?」
夏音は自分を指さし、首を傾げた。
そして、結衣花と向き合って正座した。
「ノン、結衣花ちゃんが話したいことあるんだと思ったんだけど……」
夏音が優しく問いかけると、結衣花は薄らと涙を浮かべた。
「……ひどいこと言って、ごめんなさい」
すると、夏音はそっと結衣花の頭を撫でた。
「大丈夫。気にしないで」
夏音がそう言っても、結衣花の涙は重力に逆らえず、頬に一筋落ちた。
本当に泣かれると思わなかった夏音は、戸惑う。
「えっと、結衣花ちゃん、笑って?ノン、涙とか悲しい空気、嫌いなの」
それでもゆっくりと涙が流れていく。
結衣花は本当に反省し、申し訳ないと思ったのだ。
それと同時に、玲二に本音を言えたことの安心感もあり、涙を止めることが出来なかった。
「えっと、えっと……ほら、看板ちゃんは笑顔が売り物、でしょう?」
夏音は満面の笑みを浮かべた。