ツインテールの魔法

3


結衣花と夏音は、奥にある和室の結衣花の部屋に行った。

外から海水客の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


「外の声、意外と聞こえるね」


夏音は店との出入口に耳を当てる。


「で、聞きたいことあるんじゃないの?」
「聞きたいこと?ノンが?」


夏音は自分を指さし、首を傾げた。
そして、結衣花と向き合って正座した。


「ノン、結衣花ちゃんが話したいことあるんだと思ったんだけど……」


夏音が優しく問いかけると、結衣花は薄らと涙を浮かべた。


「……ひどいこと言って、ごめんなさい」


すると、夏音はそっと結衣花の頭を撫でた。


「大丈夫。気にしないで」


夏音がそう言っても、結衣花の涙は重力に逆らえず、頬に一筋落ちた。

本当に泣かれると思わなかった夏音は、戸惑う。


「えっと、結衣花ちゃん、笑って?ノン、涙とか悲しい空気、嫌いなの」


それでもゆっくりと涙が流れていく。
結衣花は本当に反省し、申し訳ないと思ったのだ。

それと同時に、玲二に本音を言えたことの安心感もあり、涙を止めることが出来なかった。


「えっと、えっと……ほら、看板ちゃんは笑顔が売り物、でしょう?」


夏音は満面の笑みを浮かべた。
< 76 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop