ツインテールの魔法
すると、それにつられるように結衣花が吹き出した。
「それを言うなら、看板娘は笑顔が売り、でしょ。私は看板じゃないし、私の笑顔は売り物じゃない。笑いたいときに笑うよ」
結衣花の笑顔を見て、夏音は頬に残った涙を拭う。
「よかった。笑ってくれた」
その言葉で、結衣花は夏音がわざと間違えたと思い、頬を膨らませた。
「……人が悪い」
「えへ、ごめんね」
今度こそ、二人は仲良くなったように見えた。
しばらく笑うと、夏音は立ち上がった。
「それじゃ、そろそろ戻ろう。蒼羽くんが水原くんに余計なこと言うころだから」
「ノンちゃん、なんでもわかるんだね」
結衣花は立ちながら、感心してそう零した。
すると、夏音は結衣花に抱きついた。
「ノンのこと、名前で呼んでくれた!」
結衣花は夏音を呼んだことを、すぐに後悔した。
「苦しいって、ば!」
結衣花が訴えたり押したりしても、夏音が離そうとしない。
強行突破として夏音の足を踏もうとしたとき、外から大きな音がした。
「あ、しまった」
夏音は結衣花を離した。
「結衣花に彼氏はまだ早い!」
玲二の叫び声が聞こえ、結衣花は慌ててドアを開けた。