ツインテールの魔法
今まではぐらかしていたのが不思議になるくらい、紘は丁寧に説明していく。
「夏音のあの髪型は、おまじないみたいなものだ。ああしてないと、夏音の気分は落ち込み、下手すれば自殺をしかねない」
「だからあんな必死な顔して、あの人の居場所を……?」
「そうだ」
肯定の言葉を聞いて、結衣花はあることに気付いた。
「探しに行かなくていいの!?あの人、今思い出してるんだよね!?今こそ、自殺するんじゃ……!」
「大丈夫だ」
「どうして言い切るの!?あおくんも引き止めて、ノンちゃんの、こと……」
だんだん声が小さくなり、結衣花は店の外を見渡した。
予想通り、出入口の影に夏音が隠れていた。
結衣花は呆れたのと、安心からため息をついた。
「逃げたフリ、上手ね」
「……知らないところで、過去のこと話されたくないだけだもん」
夏音は頬を膨らませた。
「全部あの人にバレてるけど」
「紘くんはノンのこと、わかってくれてる。だから、結衣花ちゃんたちにノンのこと、話してくれた。それに……」
夏音が語尾を濁したため、結衣花は首を傾げる。
だが、夏音は俯くばかりで続きを言おうとしない。
夏音には自分で話せない理由があったが、それは絶対に言えなかった。
「……一人が寂しいって、自分のことだったんだね」
夏音は頷く。
「バカな性格は演技……言い間違えも演技……偽りだらけ」