ツインテールの魔法
すると、いつの間にか後ろにいた紘が結衣花の頭に拳を置いた。
「ストレートに言い過ぎ」
「いいよ、紘くん。本当のことだし」
涙を拭った夏音は、笑っていなかった。
「嫌な気持ちになるような話聞かせちゃって、ごめんね」
夏音がそっと結衣花に手を伸ばすと、結衣花はそれをはらった。
「なんで演技なんかするの」
結衣花の声色には、怒りが見えた。
夏音は戸惑いを見せるが、今までのような態度で答えるわけにはいかないと思った。
「性格はそうしてないと、自分がおかしくなると思ったから。わざと言い間違えてたのは……ノンが間違えたら、紘くんが訂正してくれる。それで自分が存在してるって思ってた」
わざとらしいと思っていた夏音の笑顔は、結衣花の前にはなく、真剣な目をしていた。
結衣花は夏音を抱きついた。
「結衣花ちゃん……?」
結衣花はなにも言わずに、手に力を入れた。
ときどき聞こえてくる鼻をすする音から、夏音は結衣花が泣いていると思った。
今度こそ、結衣花の頭を撫でた。
「……嘘つき」
結衣花は顔をうずめて囁いた。
「結衣花ちゃんだって」
上からの返答で、結衣花は抱きついたまま夏音の顔を見上げた。
そんな笑い合う二人を見て、紘はそこから離れた。