ツインテールの魔法

店に入ろうとすると、蒼羽に肩を掴まれた。


「……お前が気になることは全部話しただろ」
「違う。さっきの話、学校で言うのか?」


紘は顔を顰めた。


「言うわけないだろ、馬鹿か」
「じゃあお前らの関係、どう説明するんだよ」


夏音が双子ではないと言って、どういうことかと迫られていたが、夏音も紘も説明しなかった。
そしてそのまま夏休みに入ったのだ。


「いとこで問題ないだろ」
「信じるとでも?」


紘は蒼羽の手を叩き落とす。


「どうせ忘れてるだろ。だから、わざわざこっちから蒸し返すようなことはしない。聞かれたときに、そう答えたらいい」


店に入る紘について、蒼羽も中に入る。
翔貴はいつの間にか帰っていたらしく、店にはいなかった。


紘と背を向けるように座ると、玲二が二人に氷の入った水を出す。
そして空気を読んだのか、無言で厨房に戻っていった。


「ノンちゃん……本当に恋愛する気、ないのかな」


揺れる水面を見つめながら呟くが、紘は答えない。


「紘さ……恋愛は絶対にしないってわかってながら、なんでノンちゃんが好きだとか暴露したの?」
「……あのままだと、都築は夏音に迫っただろ」


返す言葉がなかった。


「俺が夏音を渡せないと言えば、少しは引くと思った」
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