ツインテールの魔法

「じゃあ、嘘なのか!?」


蒼羽が振り向くとわかっていたかのように、紘は本を構えていて、蒼羽の額に当たった。


「そんな趣味の悪い嘘をつくわけないだろ」
「……だよな」


蒼羽は再び水面を眺める。
氷が溶け、カラン……と音がする。


「ただ……失敗した」


今度は慎重に、ゆっくりと振り返る。
後ろから見てもわかるくらい、紘は俯いていた。


「夏音は一人になること、家族を失うことを恐れてる。……なのに、俺が恋愛関係になりたいと思われてもおかしくないようなことを言った。失敗としか言いようがない」
「なんだ、自慢か。お前がダメになったら俺がいる」


すると、紘は鼻で笑った。


「……なんだよ」


蒼羽のほうを向いた紘は、蒼羽を嘲笑しているとしか見えない表情を浮かべていた。


「お前が俺の代わりに?無理だろ」
「そうそう。紘くんの代わりも、蒼羽くんの代わりもいないんだから」


後ろからきた声に、蒼羽はゆっくりと振り向く。


「えっと……ノンさん、どこから聞いてた?」
「紘くんの、お前が俺の代わりに?ってとこから」


蒼羽と紘は揃って胸をなでおろした。


「あのね、紘くん!今度こそ、結衣花ちゃんと海に行ってくるね!」
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