ツインテールの魔法
二人の不安をよそに、夏音は紘に迫った。
いつもの夏音に戻っていたことに、紘は内心安心した。
「もう日が暮れる」
「ちょっとだけ!足つけるだけ!ね、いいでしょ?」
本当に海に入りたいらしく、夏音は引き下がらなかった。
紘はこれ以上なにを言っても無駄だと思い、ため息をつく。
それを許可と捉えた夏音は、結衣花の手を引いて海に向かって走り出した。
「……さっきの話の続き、しようよ」
「もう終わっただろ。これ以上なにを話すんだ」
「冷たいな。もう少し恋バナに付き合ってよ」
蒼羽は紘の背に腕を置き、体重をかけた。
紘は逃げるように隣に移動した。
力が入ったままの蒼羽は、バランスを崩す。
背もたれがないベンチタイプだったため、紘の座っていたところに顔を近付けることとなった蒼羽を、紘は蔑むような目で見下ろした。
「男とそんなことをする趣味はない」
蒼羽は体を起こす。
「でも気になるでしょ。なんで俺がノンちゃんを好きだって言い出したかとか」
「どうでもいい」
紘の態度に、蒼羽は少し苛立ちを覚える。
「余計なことしやがって、とか思わないんだ」
「お前だって小学生じゃない。いつか自覚するとは思ってた」