ツインテールの魔法
◆ ◇ ◆
五時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った瞬間、夏音は教卓に走った。
「先生、ノート!」
単語だけを並べられた文に苦笑しながら、ノートを差し出す。
だが、それは夏音の手には渡らない。
日野はノートを持つ力を強め、離さなかった。
「先生、ノート返してください?」
言い方が悪くて返してもらえなかったと思った夏音は、疑問符をつけながら言い直す。
それでも、ノートは戻ってこない。
「ここに書かれている問題……全部解いたのか?」
質問の意図はわからなかったが、夏音は頷いた。
「桃城は……謎解き、好きか?」
「好き、だけど……」
即答だったが、いつものような眩しい笑顔は見られない。
その質問になんの意味があるのかわからず、不信感を抱いたのだ。
「ちょっと、手を貸してくれないか」
すると、夏音はいつもの笑顔に戻った。
「ノンでよければ!」
◇ ◆ ◇
木造の部室専用校舎。
ミステリー研究部の部室は、二階の突き当たりにある。
まだ四時半だというのに、廊下は薄暗い。
そして広いとも狭いとも言えない、ちょうどいい広さの部室には、夏音と紘、蒼羽に日野がいた。