ツインテールの魔法
小豆は慌てて夏音を追いかける。
「ノンちゃん変だよ。どうしたの?」
「……どうすればいいか、わかんないの。自分を偽って作ってたこと、過去……全部知られた。それなのに、まだ偽るのって、なんか……」
夏音は言葉が出てこなくなり、口を閉じた。
小豆には、海の家に行った翌日に夏音の過去のことを話した。
だから、小豆は夏音の言いたいことを察した。
「今まで通りでいいと思うけどなあ……」
小豆は隣を歩く夏音の顔を覗き込んだ。
小豆に視線だけを向ける。
「だってほら、十年以上今のノンちゃんで生きてきたんでしょ?なら、全部が偽りじゃないと思うし、それがノンちゃんなんじゃないかな」
見つめてくる瞳が潤んでいくことがわかった。
安心させるために、優しく微笑みかける。
「蒼羽くん……変に思わないかな……」
「今の態度のほうが変だと思うよ?それに、都築くんは前と同じように接してくれてるでしょ?」
夏音は頷いたが、まだ不安が消えていないようだった。
「……なんて、これは私の意見だから、頭の隅にでも置いといてよ。ノンちゃんがじっくり悩んで、どうするか決めたらいい」
「……ありがとう、あずちゃん」