ツインテールの魔法
「紘くん……帰ろ……」
落ち込んでいる夏音に、蒼羽は声をかけることすらできなかった。
自分の無力さに、心底呆れた。
紘は夏音の鞄も持ち、先に部室を出た夏音を追う。
一人残されたくなくて蒼羽も出るが、二人と歩こうとはしなかった。
なにがあったのか聞くことが出来るのは紘だけで、自分がいては夏音は話さないと判断したからだ。
蒼羽は一人、悔しさを噛み締めながら、学校をあとにした。
◆ ◇ ◆
学校を出て、家の近所にある公園に行った。
まだ夏休み中ということで、子供たちが楽しそうにしているが、ベンチに並んで腰掛ける二人の空気はどこか重かった。
夏音の手元には、紘が自販機で買ったりんごジュースがある。
「……紘くん、うーちゃんのこと、覚えてる?」
紘は口元に持っていったコーヒーを喉に通す前にそれを聞き、缶を下ろした。
「藤宮麗か……もしかして」
「うん……職員室の前で、すれ違ったの……」
紘はなにがあったのか、だいたい予想がついた。
そしてかける言葉を探す。
「うーちゃん……まだ、怒ってるみたいだった……ノンに、偽善者って……でもね、ノン、あのこと忘れたわけじゃないの」
顔を上げた夏音は、また泣きそうになっていた。
紘はそんな夏音の頬にそっと触れる。