時のなかの赤い糸


「永倉さん……」



西郷に目で言えと言われた遥は、一息すうと永倉を見つめた。




「うけてたつ」




お互いふっと笑いあって、庭に出た。



「永倉さんっ!」

「綾野」




優しいあの声に呼ばれてすがりたくなる。



「大丈夫だよ」



小十郎が前みたいににっこり笑って遥の頭をくしゃりと撫でた。




庭に出た二人はいっこうに動く気配がなくて、ただ距離を保ったまま互いを見ていた。




「………んなら、いきまっせ」



――――――――キ――ン
と言う鉄の擦れあう音がして、刀があわさった。




「……王子さんよぉ、俺が勝ったら次は京に昇る。
負けたら、当分は退いたろ」



「あぁ、そりゃ助かるぜ」




鬼と狼の刀あわせは始まった。



永倉が力いっぱい刀を振るのに、西郷はそれを軽く刀で全て止めていた。




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