時のなかの赤い糸
近藤が、道場主である義父に、卵を買ってこいと頼まれて、町に出ていた。
「百姓のくせに武士の真似しやがって」
「生意気だな」
「どうせ百姓だろ?」
近藤は痛い視線を向けられていた。
武士の真似事。
百姓である近藤は、ただその自分に向けられていた言葉に耐えていた。
「………っ」
早足に歩きだすとグイッと土方に手を掴まれた。
「お前このままでいいんか?!」
グッと近藤が下唇をかんだ。
「このままは嫌だ」
高く土方を見据えた近藤は睨み付けるようにいいはなった。
「武士よりも武士らしくなりたい。
武士になれないなら、武士らしくなりたい」
近藤が言うと、土方はニヤリと嬉しそうな笑みを浮かべた。