時のなかの赤い糸
遥はピシッとその場に固まってしまった。
「先生……これ最後まで読みましたか?」
「えぇ、まあ」
遥は本を見つめ、【新撰組】の文字を頭で唱えた。
何だか心がザワザワするような。
セカセカ?違う。ドキドキ?……………
ワクワク…………?
なんとも言えないザワザワ感に、遥は冷や汗を流すも、先生はなお話し続けた。
「最後のページ見てみて?」
遥は本をパラッと捲ると、古い本の香りが鼻について、頭の中がポオッとなった気がした。
最後のページは少し物語離れしていて、
【綾野へ】と言う語句から始まっていた。
「綾野へ、懐かしき君の姿が今でも鮮明に思い出すことができる。
最後に君が空に消えてしまう時、どれだけ連れ戻したいと思ったか。
70を過ぎた今でも君の髪に触れたく思う。
それなのに、君は手に届くところにはいない
それならどうか、筆で君に届けたい。
今、迎えに行きますと」